川を渡り山の方へ、川に沿って山の方へ
日曜日は山間の町へ行きました。こうやって書くと「コイツ、遊んでばかりいやがるな!」と思われがちですが、仕事で行ったのです。「でも、君の仕事はメルヘンハウスで本を売ることだろ?」と思われがちですが、本屋の仕事はお店で立ち読みしている人の横で、ハタキをバシバシやるだけではありません!
本をお届けしたり、出張販売したり、ブッククラブという子どもの本の定期便をやったりと、本に関わる仕事はみなさんの目の見えないところでた〜くさんあるのです。
今回は、山間の町にある小さな小学校へ出張販売に行ってきたのです。
全校生徒は11人!
今回訪問した学校の全校生徒はなんと11人!行く前まで13人と聞いてましたが、直前に「2名ほど引越しました。」と連絡が。名古屋から車で約2時間。高速道路を降りてから30〜40分、のどかな田園風景を抜けて、険しい山道を登り到着。
到着後、真っ先に向かったのは体育館。中に入る前からなんだか子どもたちの大きな声が聞こえます。なんだろう?と思いながら真っ暗な体育館に入ると・・・学芸会の真っ最中でした。
低学年と高学年に分かれて2つの劇が行われましたが、なんせ全校生徒が11人しかいないので、一人二役どころか一人五役ぐらいしていました。観ている方も「さっき出てきた子は、今の子の何々で、左の子は・・・」みたいに、登場人物がよくわからなくなったりしましたが、子どもたちの熱演がとても眩しかったです。観客席には、父兄はもちろんのこと、近所のお婆さんや卒業生や駐在さんまで!
25年ぶりの給食を食す。
午前中の学芸会が大盛況のうちに終わり、午後はお待ちかねの選書会!その前に、生徒と父兄と混じって給食をご馳走になりました。献立はハヤシライスに野菜サラダに牛乳。もちろん、食べる前には係の子どもが「よく噛んで、感謝して食べましょう!いただきます!」なんて決まり文句があり、みんなで手を合わせます。味は懐かしい給食の味でした。特別美味しくも不味くもない味。でも、嬉しい味なんです。スペシャルな味。これはどうもうまく説明できないのです。みなさん、わかるでしょ?この感覚。
選書はワイワイしてキャッキャしてゲラゲラして
給食が終わり、いくつかの絵本の読み聞かせをし、いよいよ選書会です。大きな教室にたくさんの本を並べて、子どもたちは思い思いに本を手に取ります。1人でじっくり選ぶ子、友達とワイワイ言いながら選ぶ子、本選びに飽きてキャッキャと走り回り、お母さんに怒られる子、ずっと同じ本を何回も読んでゲラゲラと笑っている子、本当にみんな楽しそうに自分の1冊を選んでました。
来年また会おうね!再来年は・・・
この小学校とメルヘンハウスのお付き合いは10年ぐらいになるそうです。毎年、メルヘンハウスのスタッフも行くのを楽しみにしています。僕もとても楽しみにしてました。そして、また来年が楽しみです。しかし、再来年は残念ながらありません。再来年は廃校になり、この地域の4つの小学校が統合されるとのこと。
都会の人間の勝手な思い
都会で育った僕の無い物ねだりかもしれませんが、こんな山間の中で生活しているのが羨ましくてたまりません。何百人もいる小学校で知らない顔もたくさんいるなかでの学校生活より、11人で仲良く兄弟のように学校生活を送ることがどれだけステキなことだろうかと。こんな風景がまたひとつ消えていくことに寂しさを感じずにいられません。
子どもたちの本を選ぶ姿を見て、その純真さを肌で感じ、ずっとこのままでいてほしいなんて思ってしまいました。それは都会育ちの僕のエゴかも知れませんが、こんな光景がまたひとつ消えるたびに、この国がどっか知らない彼方へ行ってしまうのではないかと不安になります。僕らは加速して便利になる世の中の代償として、大きく大切なことを失ったりしていないかな?なんて少しセンチメンタルな夕焼けタイム。
そんなことを考えながらの帰路は、ナビに従わずに行った道で倍以上の時間がかかり、切なさと苛立ちが僕の中を交差し絡まっていたのでした。
おしまい