第2回「1冊の本との出合い」

なぜ子どもの本専門店だったのか? その2

ちょっと遅い感もありますが、小5で出合ったスティーブンソンの『宝島』は、ぼくにとっての本格的な子どもの本のスタートとなるものです。

 小学5年生の夏。忘れもしない体育が中止になるほどの猛暑の日でした。担任の先生が、何を思ったか「体育の代わりに、今から先生が一番好きな本を読む!」と、ポケットから『宝島』の文庫本を取り出しました。このくらいの暑さならソフトボールができるのにと、読書が好きでないぼくは、うらめしそうにグランドを見ていました。しばらくすると、夢中になって読む先生の雰囲気が感じられたことと、このバンカラ先生の一番好きな本とはどんな話かという興味から、つい耳を傾けてしまいました。そうしたらこの話の面白いことと言ったら、今まで味わったことのない経験でした。すっかり主人公のジム少年になりきって冒険しているのでした。

移転前のメルヘンハウス店内

移転前のメルヘンハウス店内

本の世界へ吸い込まれていく

「先生、次の時間も続けて読んで!」と言い出したのは自他共に本嫌いを認めるぼくでしたので、「おまえが言うのなら読もう」そう言って、次の時間も読み聞かせは続くのでした。毎日少しずつの読み聞かせは、3ヶ月も続いたでしょうか、あの海洋冒険小説はすっかり自分のものになりました。あのバンカラ先生との出会い、そして『宝島』との出合い、偶然ではありますが、つくってくれた神様に感謝です。こんな出合いから60年、今でも『宝島』を手にとると、一瞬にしてあの暑い日にもどるのです。瑞々しい感性を持つ子ども時代にいい本と出合う、こんな経験をたくさんの子どもたちにしてほしいものです。

本との出合いには人との出会い

 子ども時代の「本との出合い」は、たいてい「人との出会い」でもあります。「先生が読んでくれた」、「友だちが教えてくれた」、「プレゼントとしてもらった」、「書店のおじさんが薦めてくれた」、このように1冊の本との出合いを追いかけてみると、かならず「人」「場所」が出てきます。

移転前のメルヘンハウス店内

移転前のメルヘンハウス店内

 メルヘンハウスでは、3万冊の子どもの本をそろえています。1年に1冊も売れない本もあります。「もしかしたら、明日すばらしい出合いがあるかもしれない」そのためには、売れないからと言って、おろそかにできません。こんなことで頭がいっぱいになってきました。出会いをプロデュースする「人」でありたい、「場所」でありたい、こんな方向性が確かなものとなって来ました。いよいよ開店近しというところです。

メルヘンハウス代表 三輪哲

 

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お店のご紹介 詳細

営業時間
午前10時~午後7時まで
定休日
毎週水曜日
住所
〒464-0850 名古屋市千種区今池2-3-14
JR・地下鉄東山線 千種駅徒歩5分
※駐車場は店の裏手に5台
詳しいアクセス
TEL
052-733-6481

選びぬかれた絵本や童話を常時30,000冊揃えて、みなさまのご来店をお待ちしております。

絵本の読み聞かせ、紙芝居など、楽しいイベントを定期的に開催しております。

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