第5回「子どもの厳しい目に対応できているか」

選書の基準は?

開店以来ずっと気をつけ、こだわっていることは店に並べる本の「選書」です。基準は、創作姿勢が子どもにきちんと向き合っているかどうかです。

雑誌や漫画はあえて置きません。テレビ番組の絵本化したものや名作のダイジェストも選書からはずしました。子どものものだからこの程度でいいだろう、という安易なものもはずしています。子どもの優れた感性をきちんと考えているかどうか、奇をてらうものではなく、地に足をつけたしっかりとしたものであるかどうかなどに、気をつけています。時として失敗もありますが、こうして選んだ本が店に並びます。

表紙を見せる贅沢な陳列

店で皆さんといい出合いのための工夫も考えてあります。そのために可能な限り面陳(表紙見せ陳列)をしています。「贅沢な陳列方法だね」と、よく言われます。でも経済効率を考える背表紙しか見えない本棚さし込み陳列よりも、読者にとっても並べられる本にとっても、幸せだと思います。

移転前のメルヘンハウス店内

移転前のメルヘンハウス店内

『ぐりとぐら』にまつわる話

面陳の一角を40年以上にわたって占有している本もたくさんありますが、その中から、今回は『ぐりとぐら』(福音館書店)にまつわる話をご紹介しましょう。

ある時、歩き始めた頃の男の子を連れたお母さんが、ふらっと店に入ってきました。店内をぐるっと見て回っている時、『ぐりとぐら』(福音館書店)を見つけました。奇声に近い声で「キャーっ、懐かしい。『ぐりとぐら』まだ出ているんですね」と、早速座り込んで、他のお客さんがびっくりするぐらい大きな声で、しかも子どもそっちのけで読み始めました。「♪ぼくらのなまえはぐりとぐら このよでいちばんすきなのは おりょうりすることたべること ぐりぐら ぐりぐら♪」興奮しながら、懐かしそうに、自分の世界を楽しんでいました。

移転前のメルヘンハウス店内

移転前のメルヘンハウス店内

いい本は密かに沈殿していく

読み終わり、落ち着いてからお話ができました。20年ぶりに出合ったこと、幼稚園で先生が読んでくれていたこと、となりにいた友だちのこと、部屋の様子……、完全に20年前にワープしていたようです。そして何よりも焼きあがったカステラをたくさんの動物たちが、おいしそうに食べる場面に興奮したことなどを昨日のことのように嬉しそうに話してくれました。
いい本は、出合った時が何年前であろうと心の奥深くに、気づくことなく密かに沈殿していくものですね。

代表 三輪哲

ぐりとぐら : 中川 李枝子
中川 李枝子/ 作
大村 百合子/ 絵
福音館書店

野ねずみのぐりとぐらは森で大きなたまごを見つける。料理すること、食べることが大好きな二人は、この大きなたまごで大きなカステラを焼く。森中の動物達もにおいに誘われて集まってきた…。多くの子どもたちの心をとらえてはなさないロングセラー絵本。

対象年齢 : 3才ぐらいから
800円 + 税 購入する
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おすすめ情報

お店のご紹介 詳細

営業時間
午前10時~午後7時まで
定休日
毎週水曜日
住所
〒464-0850 名古屋市千種区今池2-3-14
JR・地下鉄東山線 千種駅徒歩5分
※駐車場は店の裏手に5台
詳しいアクセス
TEL
052-733-6481

選びぬかれた絵本や童話を常時30,000冊揃えて、みなさまのご来店をお待ちしております。

絵本の読み聞かせ、紙芝居など、楽しいイベントを定期的に開催しております。

イベントページでご確認ください。

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