第6回「出会いの場は楽しくなければならない」

立ち読みでなく、座り読み。

本の陳列方法は表紙見せの方法をとったことは先回お話ししました。それとこれも当たり前のように店内にテーブルを置き、通路には小さな腰掛を配置しました。ごく自然にやったことですが、お客さんには奇異に映っていたようです。「座って読んでいいのですか?」とよく聞かれたものでした。

考えてみれば、一般書店で本を立ち読みしていると、本屋のおじさんがホコリなどないのに店の奥からハタキを持ち出し、これ見よがしにパタパタ始めたものでした。買うか買わないかわからない長い立ち読みは嫌われたものでした。そんな本屋の雰囲気が当たり前の中、「立ち読みは止めて、座り読みをどうぞ」とのメッセージを含んだテーブルと腰掛は、お客さんを戸惑わせたものです。しかし子どもは見事に僕の意図が分かってくれてすぐなじんでくれました。

座り読みは今でも大歓迎!

座り読みは今でも大歓迎!

小さな子どもが読み聞かせをしてくれた!

そしてこのシチュエーションの中から、いくつもの楽しい出合いのドラマが生まれてきました。そのひとつにタツ君のお話があります。3才ぐらいだったタツ君は、両親とお姉ちゃんの4人で頻繁に来てくれました。店に入ってくると決まってやることがありました。まずは『ねずみくんのチョッキ』(ポプラ社)を手にとります。お気に入りの緑の腰掛に座り、僕を呼ぶのです。「読んであげるから座りなさい」と指図します。そして読み聞かせが始まります。もちろん字は読めませんが、お話は丸暗記していて、それはそれは見事な語りです。

「おかあさんが あんで くれた ぼくの チョッキ ぴったり にあうでしょう」
「いい チョッキだね ちょっと きせてよ」
「うん」
「すこし きついが にあうかな?」

だんだん大きな動物が、ねずみ君のお気に入りのチョッキを着ていきます。タツ君の声も動物の大きさに合せてだんだん大きくなっていくのです。この読み聞かせの儀式は、しばらくの間続きました。タツ君にとってはこれは僕に対するあいさつぐらいに思っていたようです。
小さな子どもが読み聞かせてくれた初めての経験でした。

代表 三輪哲

ねずみくんのチョッキ : なかえ よしを
なかえよしを / 作
上野紀子/ 絵
ポプラ社

お母さんが編んでくれた赤いチョッキ、ねずみくんにぴったり。そこへあひるくんがやって来て「ちょっと着せてよ」。次々に大きな動物が着てみるうちにチョッキは…。ロングセラーの愉快な絵本。

対象年齢 : 2才ぐらいから
1,000円 + 税 購入する
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