第11回「こんな楽しい子と出会う!」

ポケットから取り出したヒモを使って・・・

すてきな本と感性豊かな子どもが出合うと、予期しない素晴らしいドラマが生まれます。
 
3才のHちゃんは、メルヘンハウスから100メートルもない距離に住んでいました。お母さんに注意されながらも一人で来てしまいます。「メルヘンハウスへ行く」は、Hちゃんの生活のサイクルの中に入っているようで、来る時間はおおよそ決まっています。

ある日のこと、店に入ってきたHちゃんに「おはよう」と声をかけると、だまってポケットからひもを取り出して、僕に手渡すのです。何のことかわからず「このひもどうするの?」と聞いてみると、くるっと背中を見せてスカートのたすき掛けに結んで引っ張れというのです。「ははん、犬か猫のまねをするのだな」と思ってピンピンと引っ張ってやると「ちがうでしょ。ウントコショ ドッコイショ!って言わなきゃだめでしょ!」ときた。そういえば、何ヶ月か『おおきなかぶ』(福音館書店)を毎日読まされていると、お母さんから聞いていました。

移転前のメルヘンハウスでの工作教室の一コマ。

移転前のメルヘンハウスでの工作教室の一コマ。

子どもと一緒に「ウントコショ ドッコイショ!」

これはとことん付き合ってみようと、ひもを持って絵本の通り「ウントコショ ドッコイショ」と言いながら引っ張ってみました。かぶになったHちゃんは、抜かれまいと机にしがみつくのでした。この様子を見ていた大人のお客さんが「まあかわいい『おおきなかぶ』だわ」と喜ぶと、Hちゃんはそのお客さんに向かって「あなたたちも引っ張って……」と指図したのです。

大の大人3人に引っ張らせてHちゃん(かぶ)もがんばっていましたが、ころ合いを見計らって机にかけた手を離しました。そして一言、「やっとかぶは抜けました」。この時の恰好は、絵本と同じ片足立ちで喜びいっぱいのおじいさんの姿になっているのでした。

この楽しい遊びは演出、脚本、主役、その他を一人でこなす「Hちゃん劇団」としてしばらく続きました。

代表 三輪哲

おおきなかぶ : 佐藤 忠良
A・トルストイ/再話
佐藤忠良 / 絵
内田莉莎子 / 訳
福音館書店

大きなかぶをみんなで力を合わせて抜くという単純な物語の中に、大らかさ、力強さ、ユーモアなどが満ちあふれ、ロシア民話の楽しさを味わわせてくれます。

対象年齢 : 3才ぐらいから
800円 + 税 購入する
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