第12回「テクニックよりハートです!」

『スーホの白い馬』をご存知ですか?

モンゴルの民族楽器「馬頭琴」にまつわる民話に『スーホの白い馬』(福音館書店)という話があります。

貧しい羊飼いの少年スーホは、お婆さんと二人でモンゴルの大草原で暮らしていました。ある時、スーホは生まれたばかりの白い仔馬を助け、心を込めて世話をしました。おかげで白い馬は、立派に成長しました。
そして、国じゅうから集まった若者たちの競馬の大会にスーホとともに出て見事一等となります。ところが、悪徳殿様にだまされて白い馬をとられてしまいます。スーホに会いたい白い馬は、すきを見て逃げだします。追手の弓矢を体に受けたまま、やっとの思いで帰ってきましたが、そのまま息絶えてしまいます。スーホは深い悲しみの中で夢に出てきた白い馬からこんな話を聞きます。

「そんなに悲しまないで、私の骨や皮や筋や毛を使って楽器を作ってください。そうすれば、いつでもいっしょにいられます」。

夢から覚めたスーホは、早速言われたとおりの楽器を作ります。今でも「馬頭琴」の美しい音色は、人々の心を和ませています。

移転前のメルヘンハウス

移転前のメルヘンハウス

「テクニックじゃないよ、ハートだよ」

ざっとこんな話ですが、この本でも忘れられないドラマがあります。吃音(発音障害)のお父さんとお話し好きのお母さん、そして1年生になる女の子の3人家族がよく来店してくれました。ある時、ちょっと気になることがありました。女の子はいつも本選びをお父さんとしていることに気がつきました。

何気なく「読んでくれるのはお母さんでしょ。どうしてお父さんと選んでいるの?」と聞いてしまいました。「うん、お母さんも読んでくれるよ。お母さんは、上手だよ、速いよ……、でも時々ページを飛ばすよ」と苦笑い。「お父さんは、読んでいて泣くんだよ。特に『スーホの白い馬』は、ハンカチで涙を拭きながら読むんだよ」と悪びれることもなく言いました。

お父さんの障害から考えると、普通に読むのに比べて5~10倍時間がかかると思われます。上手に読んでくれるお母さんもいいのですが、時間はかかっても、お話の中に入り込んで小さい読者と同じ世界を共有するお父さんの気持ちがうれしいのだろうと思います。

子どもと関わっていると、「テクニックじゃないよ、ハートだよ」と、時々子どもが教えてくれることがあります。

代表 三輪哲

スーホの白い馬 : モンゴル民話
モンゴル民話
大塚勇三 / 再話
赤羽末吉/ 絵
福音館書店

モンゴルに伝わる楽器、馬頭琴の由来。馬と少年の哀切な物語を、横長の画面を生かし、大平原を舞台に雄大に描ききったこの絵本は、国際的評価を受けています。

対象年齢 : 4才ぐらいから
1,300円 + 税 購入する
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