第13回「蝶々夫人」のこと

エリック・カールさんとのこと。

世界中の子どもから喜ばれている絵本『はらぺこあおむし』(偕成社)の作者、エリック・カールさんと来日するたびにお会いできました。アメリカからご招待した偕成社々長の心配りで、世界の巨匠と4回も親しくお話しできました。

何回目かの来日・来名の時のことでした。カールさんのいつもの笑顔が少なく感じました。どうされたのか聞いてみますと、世界中からファンレターが来るのですが、その内容が自分の思惑とは離れているのだというのです。ファンレターの多くは、「とても素晴らしい絵本です。この本のおかげで子どもは1から10までの数を覚えました。曜日も学習できました」という内容だそうです。エリックさんは「私は、数や曜日を勉強してもらうためにこの本を創ったのでありません。子どもたちが私の絵本の中で遊んでほしいのです。」と顔を曇らせて言っていました。

エリック・カールさんを囲んで。

エリック・カールさんを囲んで。

「蝶々夫人」の登場!

こんな時こそエリック・カールをよく理解する子どもの出番だと思い、ある女の子と『はらぺこあおむし』の話をしました。

Sちゃんは3才ぐらいだったと思います。店の隣の家に住んでいて、毎日遊びに来ました。そして毎日『はらぺこあおむし』を、毎日同じ切り株の腰掛に座って見ていました。「月曜日、リンゴを1つ食べました。火曜日、梨を2つ食べました。水曜日、すももを3つ食べました。木曜日……」と言いながら、青虫になってあの小さな穴に指を突っ込むのです。ここまでは、よく見かける光景ですが、Sちゃんの遊び心はもうひとつ広がるのです。

最後のページの蝶々を長いこと眺めていました。しばらくすると切り株の腰掛でお尻をモジモジさせていました。気がついた私たちは、おしっこの心配をしましたが、そんなことではなく、今まさに蝶々になって飛ぼうとしていたのです。卵から青虫、そしてたくさん食べ、たくさん寝て、いよいよ蝶々に、横長の絵本の見開き一場面が大きくきれいな蝶々となって、喜びあふれて飛び立ちます。書棚と書棚の狭い空間を「Sちゃん蝶々」は、身体全体でリズムをとりながら優雅に飛んでいるのでした。

このことがあってから、しばらくの間私たちはSちゃんのことを「蝶々夫人」と呼びました。

「そうなんだよ、僕の絵本は、こんな風に楽しんでほしいのです」この話をしている間、わが意を得たりと聞いているカールさんの顔はニコニコ笑顔でした。

代表 三輪哲

はらぺこあおむし : エリック カール
エリック・カール / 作
偕成社

生まれたてのちっちゃなあおむしが、旺盛な食欲で、大きく、ふとっちょになりやがて、きれいな蝶になるまでを描いた絵本。コラージュ手法とページに穴をあけたしかけが楽しい。

対象年齢 : 1才ぐらいから
1,200円 + 税 購入する
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