第10回「かかしが生きているように見える、その怖さ!」

20数年前にロバート・ウェストールの『かかし 今―、やつらがやってくる』が出版された時、これは面白そうだと思いました。私は昔から、怖がりのくせに、ちょっとドキドキするような推理小説とか、主人公がどんどん追い詰められていくような、心理小説というか恐怖小説といった類のものが好きでした。深夜に読んでいて、ちょっとした物音に心臓が飛び出るくらい驚いたこともあります。でも、やめられないのですね。

『かかし』 R・ウェストール/作 金原瑞人/絵 徳間書店 (小学上級から)

『かかし』
R・ウェストール/作
金原瑞人/絵
徳間書店
(小学上級から)

主人公のサイモンは寄宿学校に入っていましたが、ママが再婚し、夏休みを彼らの家で過ごさなければならなくなります。再婚相手のジョーはでぶの絵描きで、サイモンは好きになれません。サイモンは亡くなったパパのことが大好きなのですが、ママは軍人だったパパのことを、よく思っていません。同じ家にいてもサイモンはひとりぼっち。ママともジョーともうまくいかず、どんどん孤立していきます。孤独感に苛まれ、やがてそれはジョーやママに対する憎悪に変わっていくのです。

古い水車小屋を見つけてから、サイモンのまわりで不可解な事が起こり始めます。サイモンは誰かにじっと見られているような……。そしてジョーの家と水車小屋の間のカブ畑に、ある日3体のかかしが現れるのです。
孤独感と憎悪。サイモンの心理が見事に描写されていて、読んでいる途中は息苦しくさえなってきます。サイモンという少年が怖いのか、不気味なかかしが怖いのか、もうどっちがどっちなのかわからなくなってくるのです。

夏の暑いこの時期に、ゾクゾクする、こんな本を読んでみるのはいかかでしょうか。
ちなみに、現在出版されているこの本には 「今―、やつらがやってくる」というサブタイトルはなくなっています。が、このサブタイトルが、怖さを強調しているように思います。

松永 みどり
大学時代に児童文学を学び、その頃からメルヘンハウスに通いつめる。今では勤続30年をこえる超ベテラン。長年に渡りブッククラブの選書を担当し、数多くの 子どもたちの心に響く本を選び抜いてきた。社内でも本選びに困ったスタッフから度々相談を持ちかけられるなど、信頼も厚い。プライベートでは2人の娘を持つ母親。野球とテニスが好きで、言わずもがな読書が大好き。

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