第15回「理解できない本があったら子どもに聞きましょう」

おはなし会は勉強の場(大人の)

メルヘンハウスでは週2回(土曜日と日曜日の15時から)おはなし会をやっています。今のように定期的ではありませんでしたが、開店当時から随時続けてきました。これによって、子どもたちが喜ぶことはとても嬉しいことですが、それと同時に、私たちの大事な勉強の場にもなっています。理解できない本が出てきた時など、いっしょに読んだりすることによって、いろいろなことを子どもたちは教えてくれます。今の私の本の楽しみ方は、半分以上は子どもが教えてくれたものだと思います。読んでいる最中、読んだ後などの子どもの会話に注意してみると面白い発見がいくつもあるものです。

たとえば、『おおきなかぶ』(福音館書店)の一場面に、「おばあさんは孫を呼んできました。孫がおばあさんを、おばあさんがお爺さんを、おじいさんが株を引っ張りました。うんとこしょ どっこいしょ それでも株はぬけません」とあります。このページに疑問を持った小1の女の子が手を挙げて読んでいる私に質問してきました。「おじさん、この家にはお父さんとお母さんはいないのですか?」あまりに唐突な質問だったのと、他の子どもたちは次のページを待っているので、不本意ながら適当に答えてその場はやり過ごしましたが、このことは、しばらくの間、私を悩ませることになりました。monogatari_19

『おおきなかぶ』にお父さんとお母さんがいないわけは?

そこで考えたのは、もし子どもの前にお父さんとお母さんを入れたら、このお話はどうなるだろうかということです。「子どもがお母さんを、お母さんがお父さんを、お父さんがおばあさんを……、それでも株は抜けません」、と入れたら、親の立場でやりがちの指導・教育の芽が出てきそうです。お父さんは言いました。「お腹に力を入れろ」、お母さんも言いました。「腰をもっと低くしなさい」と、なりそうですね。そうしたらどうでしょう、幼い読者はいっぺんに超リアルな世界に連れ戻され、お話の続きの犬、ネコ、ネズミは、出てこれなくなってしまいます。むかし話にお爺さんおばあさんは、当たり前のように出てきますが、主役としてのお父さんお母さんは、あまり出てきません。ということは、むかし話に限ったことではないですが、子どもたちがお話の世界に行こうとするとき、現実の日常の世界に引き戻す役目をしてしまうのではないでしょうか。

子どもに何か教える、指導する思いはいったんどこかに置いておいて、同じ世界を楽しむ姿勢を大事にすると、本当の本の楽しみ方が味わえるものです。

代表 三輪哲

おおきなかぶ : 佐藤 忠良
A・トルストイ/再話
佐藤忠良 / 絵
内田莉莎子 / 訳
福音館書店

大きなかぶをみんなで力を合わせて抜くという単純な物語の中に、大らかさ、力強さ、ユーモアなどが満ちあふれ、ロシア民話の楽しさを味わわせてくれます。

対象年齢 : 3才ぐらいから
800円 + 税 購入する
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お店のご紹介 詳細

営業時間
午前10時~午後7時まで
定休日
毎週水曜日
住所
〒464-0850 名古屋市千種区今池2-3-14
JR・地下鉄東山線 千種駅徒歩5分
※駐車場は店の裏手に5台
詳しいアクセス
TEL
052-733-6481

選びぬかれた絵本や童話を常時30,000冊揃えて、みなさまのご来店をお待ちしております。

絵本の読み聞かせ、紙芝居など、楽しいイベントを定期的に開催しております。

イベントページでご確認ください。

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