第93回「読んであげる!ではなく・・・」

「何を選んで良いかわからない」は当然です。

基本的に週6日、1日12時間近くはメルヘンハウスにいます。ということは、この1年半ぐらいは生活の大多数は、約3万冊の本に囲まれています。お客さんがレジにお会計にきてくれて初めて知る本があったり、子どもたちが手にとっている本を見たりして、「こんな良い本があるのか!」とか「なるほどねぇ」とか日々勉強です。

お客さんに本を案内することは、メルヘンハウスの大切な仕事です。僕が接客する多くのお客さんは、まだまだ赤ちゃんや2才ぐらいまでの子どもたちを持つ新米のお父さん・お母さんです。その多くの人が「何を選んで良いかわからない」という悩みをもっています。そんなお父さん・お母さんには、日頃メルヘンハウスに来てくれる子どもたちの様子から得たことをベーシックにして案内をしています。

そうやって案内を繰り返していると、僕のなかにご案内の定番が何冊が出てきます。そして、性別やお困りの内容や好みなどでパターンもいくつか出てきます。そんななかで、おススメ頻度が高い1冊があります。『がたん ごとん がたん ごとん』(福音館書店)です。

『がたん ごとん がたん  ごとん』 安西水丸/作 福音館書店

『がたん ごとん がたん
ごとん』
安西水丸/作
福音館書店

メルヘンハウスのブッククラブの赤ちゃんコースにも入っていますが、タイトル通り、「がたん ごとん がたん ごとん」とリズム感が良く、子どもたちがとても喜びます。僕も個人的に大好きな本でもあり、よく子どもにも読みます。まだ3ヶ月前の赤ちゃんでもジーッと画面を眺め、本をめくるときの「ペラッ」とか「シャッ」なんて音も新鮮なのか手足をばたつかせたりします。

絵本を楽しむとはどんなこと?

「絵本を楽しむ」ってことは、赤ちゃんにとってどんなことなのだろう?と最近考えます。それもお客さんの「赤ちゃんに内容とかわかるんですか?」という質問から考えるようになりました。「言われてみればそうだよなぁ〜、そんな疑問をもって当然だよなぁ〜」なんて考え、松岡亨子さんの本を読んだり、この道の大ベテランの父に聞いたりしました。しかし、答えは未だ出ていません。しかし、ひとつだけ間違いなくいえることは、内容がわかる・わからないは別として、1冊の本を通しての子どもとのコミュニケーションがとても大切であると思います。

『がたん ごとん がたん ごとん』は、「絵がカワイイ!」とは思っても、大人が大人の思考で本を開いたならば「何が面白いんだろう?」と思うことでしょう。汽車がやってきて、普段子どもたちの馴染みのあるものがどんどん乗っていく繰り返し。簡単にいえばこんなストーリー。大きな起承転結もありません。しかし、子どもたちは喜びます。大人たちは何を楽しめばよいのだろうか?もちろん、内容を含め本そのものを楽しむことが出来る大人もいるので、それはそのまま一緒に楽しめばいい。でも、本を楽しめない大人だとしたら、その場の子どもを含めた空気感を楽しめば良いのではないか?なんて思うのです。

一緒に読んだときの空気感?なんて思うかもしれません。もっと具体的にいうならば、子どものリアクションを楽しむってこと。これは本以外ではあまりできないだろうと思っています。なぜなら、赤ちゃんなどは自分で本が読めないから。誰かが読んであげる必要があるからです。オモチャであれば一人遊びも出来るけど、本は基本的にはできません。本を楽しむためには人(大人)を介さなければならないのです。

とっても乱暴ないいかたではありますが、子どもが「わかる」か否か、「為になる」か否かを考えるのではなく(大きな子どもたちには適正年齢の本もあるため、一概には言えませんが・・・)、自分が一緒に楽しめそうか否か?を想像して本を手に取ってほしいと思います。そうすると、きっと新しい子どもとの楽しみが増えるのかなぁなんて思います。

そして、絵本を大人が大人の思考で読むと、実はものすご~く深いメッセージが底に沈んでいたりするものです。底を覗いてみる楽しさを是非とも多くの大人に味わってほしいのです。

おしまい

三輪丈太郎
1975年名古屋生まれ。生まれた時から子どもの本専門店の息子という肩書きが嫌で、ここ最近までは全く児童書に関わりのないフィールドに生息。ある日、大尊敬する人から「メルヘンハウスって良いと思う児童書をセレクトして置いているんでしょ?それって、良質なDJと一緒だね!」と言われたことがキッカケでメルヘンハウスに入社することを決意。メルヘンハウスの息子歴39年、メルヘンハウス歴1年のかなり遅れてきたルーキー。

 

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※駐車場は店の裏手に5台
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TEL
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