月の絵本の反応は?『つきよ』

ちょっと変わった月の絵本

9月になるとお月様の出てくる本を読みたくなる。中秋の名月におだんごやすすきを飾って家族で月を見るなんて素敵な時間。どんな絵本を読もうかなと考えて月の出てくる絵本を探すのも楽しい時間。 この絵本『つきよ』(教育画劇)は満月じゃないところがいい。それから、この『つきよ』の月は欠けたり満ちたりもしない。表紙の夜空にぽっかり浮かんでいるちょうどいいくらいの月。そう思って表紙をめくると、見返しもその次のページもちゃんとちょうどいい加減の月が浮かんでいる。

『つきよ』 長 新太/作・絵 教育画劇

『つきよ』
長 新太/作・絵
教育画劇

そして、登場するのはたぬき!「ぼく(たぬき)が うちへ かえるとき……」なんと月が山をすべっておりてくるのを見てしまう。一緒に見ていた3才のしゅうくんは「えっ?!」とびっくり。まさか、月がおりてくるとは思わなかったみたい。わたしはたぬきがびっくりして「おなかを りょうてで きゅうっと つかんでしまいました」と読む時に、たぬきがちいさく描かれて見えにくいかなと思い、いちど本を置いて、おなかを両手できゅうっとつかんでみせる。そうすると、しゅうくんも真似しておなかをきゅうっとつかむので、笑ってしまう。そこからは、月が舟になったり、橋になったり、泳いだり、もぐったり……。月が自由に遊んでいる感じが描かれている。

長新太のナンセンス絵本は、子どもにとってもナンセンスではない?

最後に「(この月が遊んでいる)いけは もりの おくのほうにあるので、 せかいいちの たんけんかだって みつからないと ぼくはおもいます」って書いてあるので、1年生のはるちゃんに「でも、行ってみたいよね?」と聞いてみた。そうしたら「無理だよ。遠いんだよ、ひとりじゃいけないよ」と首をふりながら答える。そうか、はるちゃんに「ひとりで行ってみる?」と聞いたわけじゃないのに“ぼく”と言っているたぬきと自分を重ねているのだなあと思う。「それに、夜だよ。夜は出かけちゃだめって言われてるもん……」と、あくまでもひとりで行く姿を想像して、無理だと一生懸命言っている姿がかわいい。はるちゃんのその言い方が、池が近かったら行けるのになあと言っているように聞こえて、長新太さんの絵本はナンセンスといわれるのだけれど、子どもたちにとってはナンセンスではないのだなあと思った。

表紙のカバーに書かれている文章をプロローグとして読んで、そうっとページをめくってみましょう!

保育士 M.Yさん
愛知県生まれ。1980年より公立保育園に勤める。保育士歴は、30年以上。現在は児童センターにて日々子どもたちと向き合っている。日本保育学会員。保育現場であらゆる児童書を子どもたちに読み、実際の子どもたちの反応などを基に、児童書と子どもに関わりについて思考を巡らす情熱的な保育士。児童書に関わるイベントや美術館など全国を飛び回り、今もなお、新しい児童書との出合いを大切にしている。趣味は馬頭琴を弾くことと陶芸。

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