第105回「あけましておめでとうございます!」

『モモ』を読み返した年末。

あけましておめでとうございます!2016年がはじまりました。

毎年の恒例行事として、自ら無理難題な目標を立てるものですが、今まで一度も達成されたことがないというか、達成する気もなかったのだと思います。しかし、今年はもう少し現実味のある目標を設定し、達成できるようにしたいと思ってパンパンッ!と手を鳴らし、頭を下げたのでした。

年末年始は何十年かぶりにお正月らしいお正月でした。家族が集い、夜更かしをして、暴食(お酒は飲めないので暴飲はありません。)したり、近所の神社、お寺など目に入った神々しい場所では手を合わせて……と、充実したお正月でした。年末年始用に読む本として、近所のちくさ正文館で買い置きしておいた本をゆったりと、たっぷりと読むことができたりして、改めて「読書っていいなぁ〜」と。読書には、ある程度の時間とゆとりが必要であることを実感したりしました。

そのなかでも、とっても面白かったのが『モモ』(岩波新書)です。前に読んだのはいつなのかな?中学生?高校生?何十年も経過した今、何故『モモ』なのか?それは偶然でした。メルヘンハウスでは毎朝欠かさず掃除をしていますが、棚を整理していたときに何気なく手に取ったのです。そして、何気なく買い直しました(僕はメルヘンハウスでもよく買い物をします)。

『モモ』 ミヒャエル・エンデ/作 大島かおり/訳 (岩波書店)

『モモ』
ミヒャエル・エンデ/作
大島かおり/訳
(岩波書店)

結論から言います、この本に再会できてよかった!読み終えたときに、本当に心から思いました。読み終えたのは2015年から2016年に変わる直前だったため、新年を迎えるにあたり、この本で2015年を終えることができたことを幸せにも思いました。

「これって今の世の中と似ている!」

『モモ』を読んだ方はおわかりだと思いますが、簡単にいうと、時間どろぼうの灰色の男たちが奪った時間を、モモという女の子が奪い返すというお話です。時間どろぼうは、モモの周りの人々から「あなたは何時間何分何秒もの損失をしている。」とそそのかし、時間を奪っていきます。時間を奪われた人々は、ただ効率化を求めて無駄を省き、ただ生きていくだけ。次第にモモの周りから人は消えていき……。

「これって今の世の中と似ている!」

読んでいる途中からちょっと怖くなりました。今は何かと効率化を進める世の中で、人から人へ手渡していくことが難しくなり、このままいくと人間の存在こそが危ぶまれるのではないかと思っていたところにこの内容です。1970年代に書かれたこの本が40年以上も経った今に警告を発しているとしか思えないのです。実際に作者のミヒャエル・エンデがあとがきにて、詳しい内容はここでは説明しませんが、こんな一文を記しています。「わたしはいまの話を過去に起こったことのように話しましたね。でもそれを将来起こる事としてお話してもよかったんですよ。」

映画「猿の惑星」、星新一が書いた未来のショートストーリーなど、今の世を予言するような作品もたくさんありますが、この『モモ』もそのように感じました。

『モモ』を読んで自分自身の2015年を振り返ると、決して他人事ではなく、僕自身が灰色の男になっていた時もあることにハッとしました。効率化を目指すことで得るものと失うもの。そのバランスをしっかり保ち、常に考えていないと、取り返しのつかないことになると思いました。

時代は変われど変わらぬもの、変えてはならぬこと。

進化がもたらす老化をもっと真剣に考え、どこかで線引きをしないといけないのでは?と思います。その線引きの場所はそれぞれです。社会からドロップアウトして、自給自足の道を選ぶのもよし!このまま進化していく世の中のトレンドにしがみついて追っかけるのもよし!ただ、僕自身はどうしたいんだろう?2016年はそんなことを考えつつ、丁寧に生きていこうと思います。

メルヘンハウスでいえば、時代は変われど変わらぬもの、変えてはならぬことが一つだけあります。

「子どもたちに良い本を!」

これだけはどんな時代になろうとも変えることなく、大切にしていきたい信念です。

今年もよろしくお願いします!

おしまい

三輪丈太郎
1975年名古屋生まれ。生まれた時から子どもの本専門店の息子という肩書きが嫌で、ここ最近までは全く児童書に関わりのないフィールドに生息。ある日、大尊敬する人から「メルヘンハウスって良いと思う児童書をセレクトして置いているんでしょ?それって、良質なDJと一緒だね!」と言われたことがキッカケでメルヘンハウスに入社することを決意。メルヘンハウスの息子歴39年、メルヘンハウス歴1年のかなり遅れてきたルーキー。

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※駐車場は店の裏手に5台
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TEL
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