第109回「本を積んでどこまでも」

車に本を300冊ほど積んで出かけました。

先週、愛知県の新城市の山間部にある作手小学校に行ってきました。毎年恒例の「バースデー本を探す会」のため、車に300冊ほどの本を積んで片道2時間弱のドライブです。

そもそも「バースデー本を探す会」とは?と思う方が多いと思いますが、この取り組みは、全国の学校のなかでもとても珍しいと思います。子どもたちが、来期の自分の誕生日にもらう本を、あらかじめこの会で選んでおきます。そうすると、自分の誕生日にその本がプレゼントされるのです。どうです!素敵な会でしょ?

かれこれ10年以上も前から続いているこの取り組み。僕は昨年に引き続き2回目の参加ですが、海老小学校の訪問とともに、とっても楽しみにしている行事なのです。

移動本屋のようです。

朝6時半に出発し、8時半に到着。天気は昨年同様、快晴です。学校に着くと昨年もお会いした校長先生と「お久しぶりです!」と元気に挨拶。またお会い出来た事を嬉しく思います。早速、体育館に先生方にお手伝いいただき300冊を並べます。そこへ元気な子どもたちがやってきました。

「おはようございます!」
「よろしくお願いします!」

なんて、大きな声で挨拶してくれる子どもたち。会が始まる前からワクワクしてしまいます。現在、作手小学校は2つの校舎に分かれているため、約1時間ずつ交代で本を選びますが、まずはご挨拶から。この日のために何度も練習しただろう子どもたちからの挨拶や注意事項がとっても初々しくて、なんだか心が温まります。

次に父から本の楽しみ方や面白さを、実際に『もこ もこ もこ』(文研出版)や『おおきなかぶ』(福音館書店)や『ぞうのボタン』(冨山房)を読みながら子どもたちに伝えます。子どもたちも笑ったりして楽しんでいましたが、周りで見ていた先生や父兄の方々もとっても驚いたり、楽しんだりしていました。父が終わったあとは、僕が『べんとうべんたろう』(偕成社)を読みました。子どもたちからは「ダダダダーンッ!」と言う度に笑いが起きます(読み聞かせなどされている方、おススメの1冊ですよ!)。

『べんとうべんたろう』 中川ひろたか/作 酒井絹絵/絵 (偕成社)

『べんとうべんたろう』
中川ひろたか/作
酒井絹絵/絵
(偕成社)

子どもにとって本選びの時間は至福の時。

さあ、お待ちかねの「バースデー本を探す会」のメインタイムがやってきました。子どもたちが一斉に本に駆け寄っていきます。すぐに本を開く子、端から順に表紙を見ていく子、 既に目当ての本が決まっている子、友達と一緒に探す子など、子どもたちによって選び方はそれぞれですが、子どもたちの表情は真剣そのものです(作手小学校のホームページでも当日の様子が報告されています。)。

4月が誕生月の子は、2ヶ月後に選んだ本をプレゼントしてもらえますが、早生まれの3月の子は来年の3月にならないと本はプレゼントされません。つまりは1年も先になるのです。そんな早生まれの子が選んだ本を先生に報告するときに、「この本で大丈夫?1年後だよ、成長してるよ。もうちょっと難しい本が良いんじゃない?」なんて言われている光景も、なんだか微笑ましく思いました。

驚くべき事は、この本選びの時間中、子どもたちが1人も他事をしていなかったこと。時間目一杯を使って本探して、早く探し終えた子は友達と一緒に違う本を読んだり、友達の本探しを手伝ったり、「こんなに本と向き合ってくれるのであれば、本も幸せだろうなぁ。」と思ったりしました。

午前中に2回に分けておこなった「バースデー本を探す会」も無事に終わり、校長先生と給食を食べながら色々とお話を。過疎化の進む現実、子どもたちの未来のこと、本との関わりについてなど、短い時間ではありましたが、とっても楽しいひと時でした。

行きはよいよい、帰りは寂しい。

帰路は、もっともっと子どもたちと一緒に本の時間を楽しみたかったなぁと、とても寂しい気持ちで車を運転していました。元々、都会よりかはのんびりとした田舎暮らしに興味を持っていたり、年々、子どもたちと過ごす時間の楽しさに気付きはじめているので、今の生活に疑問を思ったり……。なんだかとても複雑な心境でした。

メルヘンハウスにも沢山の子どもたちが来てくれますが、もっともっと来て欲しい。出来ることならば一日中、子どもがいるような本屋にしたいとも思うわけです。そんなわけで待っているだけでなく、「自分から子どもたちのいるところに飛び込もう!」と思い、とある保育園にお願いして、3月のはじめに絵本を読みにいくことになりました。今からとても楽しみです。

お店で子どもたちを待ってウズウズしているなら、僕は外に出て行く。そして、本の楽しさを子どもたちに知ってもらって、メルヘンハウスに来てもらう。そんなことが出来ればとても嬉しいです。

おしまい

三輪丈太郎
1975年名古屋生まれ。生まれた時から子どもの本専門店の息子という肩書きが嫌で、ここ最近までは全く児童書に関わりのないフィールドに生息。ある日、大尊敬する人から「メルヘンハウスって良いと思う児童書をセレクトして置いているんでしょ?それって、良質なDJと一緒だね!」と言われたことがキッカケでメルヘンハウスに入社することを決意。メルヘンハウスの息子歴39年、メルヘンハウス歴1年のかなり遅れてきたルーキー。

この記事が気に入ったら
是非 いいね! してください
メルヘンハウスの最新情報をお届けします
人気の記事

Sorry. No data so far.

こちらもいかがですか?
  • 名称未設定-1
    第140回「読書の秋は忙しい!」

    2歳4ヶ月の創作話が面白い! 11月に入りました。秋は「読書の秋」と言われていますが、お陰さまで大忙し!「大人の絵本遠足」は毎週入っていて、多い時には週3回も開催することもあります。また、講演会にお呼びいただくことも多く…

  • 07-0310_01
    第139回「好きなこと(本)を好きなだけ!」

    車、電車の絵本がスキ! 9月に入りました。8月は夏休みということもあり、たくさんの子どもたちがメルヘンハウスに遊びにきてくれました。子どもの本専門店として、やっぱり子どもたちが大勢いる店内は賑やかで良いですね。今月は「読…

  • 『ともだち』
谷川俊太郎/文・和田誠/絵
(玉川大学出版部)
    第138回「かけがえのないもの」

    今日という日 今日は終戦記念日です。もう72年になるようですが、この日になると亡くなった祖母のことを思い出します。祖母が話してくれたのは、戦時中の苦しい生活や辛い出来事。毎年同じ話でしたが、小学生ぐらいからずっと聞いてい…

  • おしいれ
    第137回「読書感想文について」

    名古屋は連日の猛暑で帰る頃にはクタクタになっています。といっても、店内は冷房が効いているので、暑さのせいだけではないような気もします。「大人になると色々あるなぁ」とヒシヒシと感じる今年で42歳の男。子どもたちは「子ども」…

  • 『とべバッタ』
田島征三/作
偕成社
    第136回「栄養素の未来」

    「若さ」に触れると言うのは一つの栄養素 梅雨入りしてから、なんだか心も体がスライムのような気分です。「シャキッ!」とガリガリ君のようなシャープさがあれば良いのですが、そうもいきません。また梅雨が終われば、暑い夏がやってき…

おすすめ情報

お店のご紹介 詳細

営業時間
午前10時~午後7時まで
定休日
毎週水曜日
住所
〒464-0850 名古屋市千種区今池2-3-14
JR・地下鉄東山線 千種駅徒歩5分
※駐車場は店の裏手に5台
詳しいアクセス
TEL
052-733-6481

選びぬかれた絵本や童話を常時30,000冊揃えて、みなさまのご来店をお待ちしております。

絵本の読み聞かせ、紙芝居など、楽しいイベントを定期的に開催しております。

イベントページでご確認ください。

サイト内検索