第1回「“思い込み”の恐ろしさと楽しさって?」

なんとなく惹かれて手に取り読んだ本が、とても良かったりすると、ただもう嬉しくなります。どんな本が面白いのか、自分の気持ちに合うのか、本の顔である表紙とにらめっこなどしたりして選んでいます。好きなファンタジーや推理小説というジャンルで選ぶ時もありますし、好きな作家で選ぶ場合もあります。また、好きな何かが出てくるもの……で読み始めることもあります。この好きな何かとは、鳥だとか馬だとかそういった類のものです。1冊の本との出合いは、私の場合、そんな風に始まります。

好きな馬が登場するというので読み始めたのが『嵐にいななく』です。洪水で町ごとのみこまれてしまったため、新しい土地に引っ越したけれど、不安を抱えたままの少年ジャックが、このままでいけば馬肉として処分されそうな、みすぼらしい馬と出合い、隣人のマイケルの助けを借りながら、この馬を馬車馬として訓練していくことで、成長していく物語です。ゆっくりとしたジャックの成長もいいし、信頼できる人に出合えた馬が、その人たちの期待に応えようとする姿もとても感動的です。町の人たちの、ちょっとしたいざこざがあっても、いざという時には皆で力を合わせる、その善良さも、読んでいて嬉しくなります。読後感のとても爽やかな作品だと、この本を手に取った喜びを感じます。

たくさんの本から選ぶのも大変です。

たくさんの本の中から選ぶ楽しさ!

 

ところで、もし読んでいた本の中で“ひろみ”や“ちひろ”といった名前だけが出てきたとしたら、男の子だと思いますか、女の子だと思いますか。多分、それぞれの読者の思い込みで、男の子か女の子かを決めるのでしょう。そして、一旦そう思い込んでしまうと、なかなか変えられないのではないでしょうか。この『嵐にいななく』でもちょっとした作者のしかけがあります。そのしかけに、私はまんまとはまってしまいました。最後になって明らかにされた内容に、「えっ、そうだったの!」と、ただもう驚くばかりでした。

でも、この本をじっくり再読してみると、最初からそれとなくヒントが潜んでいました。まったく最後になってからしか分からないようにはなっていなかったのです。“思い込み”というのは、なんと恐ろしいものなのでしょう!

そうは言っても、本を読む楽しさは、こんなところにもあるものなのかもしれません。

 

本文中でご案内した『嵐にいななく』(小学館)は購入いただけます。

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嵐にいななく
L.S.マシューズ/作
三辺 律子/訳
小学館
(中学生から)

松永 みどり
大学時代に児童文学を学び、その頃からメルヘンハウスに通いつめる。今では勤続30年をこえる超ベテラン。長年に渡りブッククラブの選書を担当し、数多くの 子どもたちの心に響く本を選び抜いてきた。社内でも本選びに困ったスタッフから度々相談を持ちかけられるなど、信頼も厚い。プライベートでは2人の娘を持つ母親。野球とテニスが好きで、言わずともがな読書が大好き。

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