第15回「雄々しいゴリラにとっての棲みかは何処に」

1頭のゴリラの写真集が出版されるような今日この頃ですが、私も昔からゴリラには魅力を感じていました。特にシルバーバックと言われるオスの雄々しい姿は、圧倒的な迫力があり、みとれてしまいます。子どもが小さい頃はよく動物園に行ったものですが、必ずゴリラ舎には足を運んでいました。

ルーシー・M・ボストンもきっとゴリラに魅了されたに違いありません。狭い動物園の檻ではなく、大自然の中で生きるのが、その姿にふさわしいと思ったのではないか、だからグリーン・ノウの森にゴリラを登場させたのではないか、と私は思います。

『グリーン・ノウのお客さま』(評論社)は、ボストン夫人のグリーン・ノウ物語4作目で、この本でカーネギー賞を受賞しています。グリーン・ノウはボストン夫人が住んでいるマナーハウスがモデルとなっています。このマナーハウスは1120年に建てられた、イギリスでも最古の石造りの建物です。前には川が流れ、横にはこんもりとした森があり、とても静かな、自然に囲まれた所に、この建物は建っているのです。グリーン・ノウ物語はこの屋敷の持ち主であるオールドノウ夫人とひ孫のトーリーや、長期休暇をここで過ごすことになったピンたちと、この屋敷そのものとの不思議な関わりを描いています。昔むかしに住んでいた子どもたちとも出会うのです。

『グリーン・ノウのお客さま』     ルーシー・M・ボストン/作 ピーター・ボストン/絵 亀井俊介/訳 (評論社

『グリーン・ノウのお客さま』    
ルーシー・M・ボストン/作
ピーター・ボストン/絵
亀井俊介/訳
(評論社

シリーズは6作から成っており、それぞれの作品の手法が違っているのですが、主人公はグリーン・ノウという屋敷であり、それはボストン夫人がマナーハウスにそれ程に情熱を注いでいることの証でもあるように思います。その中で『グリーン・ノウのお客さま』は異彩を放っています。グリーン・ノウの持つ本来の神秘さは隠され、ロンドンの動物園の狭い檻との対比としての、自然として、また、保護が必要なものをそっと受け入れる場所として描かれているのです。

思いがけない結末。そしてこれしかなかったであろう結末。シリーズの他の物語とは違い、強烈なメッセージをボストン夫人は私たちに突き付けているように思えます。

松永 みどり
大学時代に児童文学を学び、その頃からメルヘンハウスに通いつめる。今では勤続30年をこえる超ベテラン。長年に渡りブッククラブの選書を担当し、数多くの 子どもたちの心に響く本を選び抜いてきた。社内でも本選びに困ったスタッフから度々相談を持ちかけられるなど、信頼も厚い。プライベートでは2人の娘を持つ母親。野球とテニスが好きで、言わずもがな読書が大好き。

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