第30回「お弁当持って本屋さんへ」

メルヘンハウスで1日を過ごす親子。

もう30年以上も前になりますが、忘れられない男の子がいました。小学4年生だったと記憶していますが、その子は、春休みを利用して、メルヘンハウスへ毎日通ってきました。

当時、子どもの本専門店は、まだ珍しい存在で新聞や雑誌の取材をよく受けました。そのうちのいくつかを目に止めたお母さんと男の子がメルヘンハウスを訪ねてくれたのです。電車を乗り継いで2時間の三重県津市からのご来店です。

本好きな親子で、「お昼ご飯はいいのかな?」と心配するほど夢中になって読みふけっていました。遅いお昼を近くのレストランでとった後も再度来店、あたりが暗くなるまで本を楽しんでいました。帰りぎわ、お母さんから「楽しい時間でした。明日も来ていいですか?」と長時間滞在を遠慮する様子で聞いてきました。

お母さんは仕事の関係でいっしょに来ることが出来ず、子ども一人で来たいとのことです。「もちろん、交通機関に十分気をつけて来ることが出来れば、一日中いてもいいですよ。お待ちしています」と言うと、喜んで帰って行かれました。

お弁当をもってメルヘンハウスへ。

さて次の日の朝、開店前にお母さんから電話があり「1時間前に自宅を出ました。もうしばらくしたらメルヘンハウスに着くはずです。どうぞよろしく」との連絡を受けました。「おはようございます!」開店と同時に元気な声が店内に響きました。張り切っていました。お弁当を持って「メルヘンハウス参り」です。

早速昨日の話の続きを手に取り、読み始めました。記憶が正しければ、その本は『大どろぼうホッツェンプロッツ』※ブックッククラブ小学3年生(Iコース)配本)だったと思います。お昼は、狭いバックヤードでおにぎりを頬張っていました。この日も何冊かの本をたっぷり楽しんだようでした。

『大どろぼうホッツェンプロッツ』 プロイスラー/作 中村浩三/訳 (偕成社)

『大どろぼうホッツェンプロッツ』
プロイスラー/作
中村浩三/訳
(偕成社)

「どうしてメルヘンハウスなの?近くに図書館だってあるでしょ」

と聞いてみると、2時間の旅の先に大好きな本があり、その本が自分を呼んでいるように思えるから、と禅問答のような答え。近くの図書館は、やはり勉強の延長線上に位置しているようで、心から楽しめないようです。「読書は楽しみである」メルヘンハウスのコンセプトを感じてくれているようでうれしかった。

「メルヘンハウスです。今から帰します」と電話。暗くならないうちに家に着くように店を送りだしました。この時の春休みは、毎日がとても楽しかったです。

代表三輪哲

この記事が気に入ったら
是非 いいね! してください
メルヘンハウスの最新情報をお届けします
人気の記事
  • こいのぼりの絵本。おすすめの絵本5冊
    こいのぼりの絵本。おすすめの絵本5冊
    こんにちは。メルヘンハウスの三輪丈太郎です。 「こいのぼり」のお話と言われて、すぐ思い浮かぶものってありますか?」「もちろん!」そう答えたあなた・・・ひょっとして、それって「こいのぼり」の歌...
  • 2歳の絵本。絶対におすすめの10冊。
    2歳の絵本。絶対におすすめの10冊。
    photo by Leon Wilson 2歳になると、言葉や色々なものを覚えてきます。基本的な生活習慣が形成され、一人で色んなことが出来るようになってくる時期です。そんな時期だからこそ、絵本の...
  • 【読み聞かせ】低学年におすすめの絵本10冊
    【読み聞かせ】低学年におすすめの絵本10冊
    photo by MIKI Yoshihito 自分の子どもへの読み聞かせはもちろん、小学校のボランティアや町内の子ども会など、意外と機会があるのが、低学年の子どもへの読み聞かせです。 でも、...
  • 大人に教えたい絵本。おすすめ10冊
    大人に教えたい絵本。おすすめ10冊
    絵本は、子どもだけのものだと思ってるそこのあなた…何てもったいない!! 絵本を一番たくさん読むのは、確かに子どもの頃かもしれません。でも、対象年齢の下限はあっても、上限がないのが絵本の良いと...
  • 泣ける絵本。大人も感動する絵本10冊
    泣ける絵本。大人も感動する絵本10冊
    あなたは、どんな時に感動したり、泣いたりしますか? 映画で思わず泣いてしまったという人は多いかもしれませんが、絵本でも泣ける内容の感動的なストーリーがたくさんあります。 この記事では、子どもだ...
こちらもいかがですか?
  • %e8%aa%95%e7%94%9f%e6%97%a5
    第43回「先輩相手に説法」

    書店の研修会で「児童書の販売についての勉強会」がありました。その講師を頼まれ講座を1つ任されました。ところが話し始めると、講師というよりも常々思っている不満をぶつけるような形になってしまいました。 「一般書店では、児童書…

  • %e8%aa%95%e7%94%9f%e6%97%a5
    第40回「子どもの本で、戦争と平和を考える」

    毎年、この時期の恒例のコーナー 毎年8月になると、店内ブックメニューのコーナーは、「子どもの本で、戦争と平和を考える」となります。開店以来毎年ですから40回以上継続している企画です。戦後も70年余となりますと、戦争経験者…

  • %e6%9c%ac%e5%b1%b1%e5%ba%97%e8%88%972
    第39回「すべてのものに生命を」

    パペット(人形)で遊ぶ子どもたち メルヘンハウスに入ってすぐのところに絵本のキャラクターのパペット(人形)がいくつか置いてあります。子どもたちの集中力がなくなってきた時、パペットで遊んで一息入れる役目を果たしています。 …

  • %e8%aa%95%e7%94%9f%e6%97%a5
    第38回「ヤングアダルトおすすめの難しさ」

    読者と本を橋渡しする仕事 小学上級から中学生ぐらいになると、「おじさん、この間すすめてくれた本、とてもおもしろかったよ。おじさんが教えてくれなかったら、きっと読まずに行ってしまったと思うよ」、こんなお礼を言われることがあ…

  • %e6%9c%ac%e5%b1%b1%e5%ba%97%e8%88%972
    第37回「ロングセラーは子どもがつくる」

    大人にとっての難しい絵本の一冊 僕の大好きな絵本に、『もこ もこもこ』(文研出版)があります。大型絵本、見開き一画面の色鮮やかな抽象画、「しーん」、「もこもこ」、「にょき」、「もぐもぐ」……などの擬態語だけで構成されてい…

おすすめ情報

お店のご紹介 詳細

営業時間
午前10時~午後7時まで
定休日
毎週水曜日
住所
〒464-0850 名古屋市千種区今池2-3-14
JR・地下鉄東山線 千種駅徒歩5分
※駐車場は店の裏手に5台
詳しいアクセス
TEL
052-733-6481

選びぬかれた絵本や童話を常時30,000冊揃えて、みなさまのご来店をお待ちしております。

絵本の読み聞かせ、紙芝居など、楽しいイベントを定期的に開催しております。

イベントページでご確認ください。

サイト内検索