第133回「子ども・絵本・笑顔があればいいわけじゃない!」

いろいろわかってきたこと。

あっという間に桜も散り、早いもので4月も後半に突入しました。当初は週2のペースでこの日記も書いていましたが、今では月1になってしまいました。まあ、数が多ければ良いと言うことでもないので、と言い訳をしながら書いています。

僕もメルヘンハウス4年目となりました。まだまだお勉強中ではありますが、構図と言うのか?仕組み?関係性?児童書業界と言うものが少しずつわかってきたような気がします。そして、色々な考え方があることも。

メルヘンハウスの基本理念は「子どもたちに良い本を!」です。「良い本とは何ぞや?」という永遠の壁を日々登っているわけですが、最近、やたらと「子ども」、「絵本」、「笑顔」を組み合わせたキャッチコピーをよく見たり、耳にします。「子どもたちを絵本で笑顔にしてあげたい」とか「絵本は子どもたちを笑顔にするものだ」とか、でも本当にそうなのかな?絵本=笑顔ってことが「絵本」なのかな?

もちろん、絵本で笑顔になることはあるし、それを目的にしていることだってあります。「子ども」、「絵本」、「笑顔」を否定しているわけでなく、その言葉の善意的なイメージを策略的に利用されている感じがとても嫌なのです。

絵本の楽しみとは?

色々とお世話になっている絵本作家の工藤ノリコさんが、2年前にメルヘンハウスで行ったトークショーの言葉で忘れられないものがあります。

「私の絵本は子どもたちの娯楽でありたい。何故なら、子どもたちはストレスの発散の術をまだ知らない子が多いから、私の絵本で楽しんでほしい」

僕は、講演会をする際によく引用させてもらっています。絵本と言うものは、笑顔だけを子どもたちに提供するものではない。その絵本の世界に入って一緒に泣いたり怒ったりすることだって、絵本の楽しみであると思います。ほんわかした優しいことだけが絵本でないことを知ってほしいと思います。

僕が好きな今はなきザ・ブルーハーツの曲で「イメージ」と言う曲があるのですが、その歌詞で「イメージ、イメージが大切だ。中身がなくてもイメージがあれば良いよ」と、ものすごく皮肉な歌詞ですが、まさにそうやって「子ども」、「絵本」、「笑顔」を利用している大人がいるってことが残念に思います。

『しばてん』を読んでほしい。

そんな人たちは田島征三さんの『しばてん』(偕成社)を読むべきだと思います。そこに笑顔はあるのか?真剣に考えていただきたい。そう、そんな意味で本物と偽物の匂いの嗅ぎ分けが少しずつ出来てきているような気がします。

『しばてん』 田島征三/作・絵 (偕成社)

『しばてん』
田島征三/作・絵
(偕成社)

「お前だってまだまだじゃないか!」

と言われれば、仰る通りです。ただ僕は「子ども」、「絵本」、「笑顔」を道具には絶対にしない。何故ならメルヘンハウスがやってきた45年の歴史は、こんな薄っぺらいものではないから。子どもたちと真剣に向き合えば合うほど、「もっとしっかりとやらねば」と思います。

特定の人の悪口ではありません。ただ、小難しく考え過ぎなだけかもしれませんが、出版書籍業界が目紛しく激変する中で、絵本を偽善に利用して欲しくないだけです。

さあ、本物をしっかりと見極める目を鍛えるところから始めよう!

おしまい

三輪丈太郎
1975年名古屋生まれ。生まれた時から子どもの本専門店の息子という肩書きが嫌で、ここ最近までは全く児童書に関わりのないフィールドに生息。ある日、大尊敬する人から「メルヘンハウスって良いと思う児童書をセレクトして置いているんでしょ?それって、良質なDJと一緒だね!」と言われたことがキッカケでメルヘンハウスに入社することを決意。メルヘンハウスの息子歴41年、メルヘンハウス歴4年目のかなり遅れてきたルーキー。

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