第135回「そこにあるのは、血の通った人間とのやり取り」

3世代で来てくれる喜び

メルヘンハウスは多くのお客様に愛されています。これはとても嬉しきことで、しかも45年目ともなると、何十年ぶりかにいらっしゃるお客様もたくさんいます。そう、子どもの為に絵本を探していたのが、今度は孫の絵本を探しにくるのです。

この光景はとても素敵で、これからもこのような光景をいくつも見たいと思います。しかし、それは店を続けていないと見れる光景ではありません。これから何十年もメルヘンハウスが続かなければならないのです。正直、その体力があるのか?
今、メルヘンハウスのような書店に限らず、商店に問われている問題です。

人の流れが変わってしまった

その原因は、まさに人の流れ(購買経路)が変わりました。なんでも揃う大型ショッピングセンターが主流となり、それに加え、インターネットショッピングの普及。この2つが人の流れを変え、商店の存在意義が薄れてきています。しかし、本当は薄れているのではなく、商店の存在意義はあるはずです。価格、品揃えでは全くをもって、この2つに比べれば劣るのは確かです。商店に唯一あるのは、血の通った人間です。

魚屋、八百屋、肉屋、本屋、文房具屋、おもちゃ屋など、本当に町から消えてしまいました。僕の小さい頃は、魚は魚屋で、野菜は八百屋、肉も鶏肉専門店などもあり、夕方近くになると、焼き鳥の良い香りがしたものです。それらは、商店街や小さな小売店が立ち並ぶ市場だったり、その地域のメインストリートに点在していたものです。

今では、ずっとシャッターが閉まったまま。看板も下げられた店もあります。とても切なく思います。古き良き時代と一言で言えばそこまでですが、人間の営みとして、本当にこのままで良いのか?とても考えます。人が人を必要としない状況が増えてきています。安ければ良いのでしょうか?送料が無料なのは当たり前なのでしょうか?世の中が進化すると言うのは、世の中から人を排除していくことなのでしょうか?

僕はただの時代遅れの懐古主義的な話をしているのか?

「昭和」を知らない平成生まれには新鮮!

『しょうてんがいくん』 大串ゆうじ/作・絵 (偕成社)

『しょうてんがいくん』
大串ゆうじ/作・絵
(偕成社)

次回のギャラリーで原画展を開催する『しょうてんがいくん』(偕成社)は、そんな僕の気持ちを代弁したかのような絵本です。ちょっと懐かしい昭和レトロの絵で、そのタイトル通り、たくさんの商店が出てきます。とても細かい書き込みで、あみだくじや迷路などもあり、一度に全て見切れないような絵本です。

もし僕の子どもの頃に発売されていたら、夢中になってページを開いたでしょう。そして、興味深いのは今の子どもたちの反応。真新しいものを見るように本を開いているのです。つまりは、商店街を知らないのです。「昭和」を知らない「平成生まれ(既に29年!)」の子どもたちには新鮮に思えるようです。

また、『えんにち』(福音館書店)も人との交流が良く描かれています。縁日の屋台の設営からはじまり、縁日での賑わいが何とも言えない描写で表現されています。描かれている人の顔はみんな活き活きとしており、そして、何よりもそこには「人と人とのやり取り」があります。こんな絵本を開いていると、とても落ち着きます。そして、小さい頃にお祭りに行ったことを思い出し、どこか切なくなるのです。

『えんにち』 五十嵐豊子/さく (福音館書店)

『えんにち』
五十嵐豊子/さく
(福音館書店)

どうぞメルヘンハウスに足を運んでください

メルヘンハウスは書店という商店です。遠方からわざわざ足を運んでくれるお客様もいます。「子どもたちに良い本を手渡していく」ことと同じぐらい「続けていくこと」が大切な仕事です。天候によっては外出を避け、インターネットショッピングをすることもあるかもしれません。しかし、出来るだけ自分の目で確かめて良い本を選んで欲しいと思います。どうぞメルヘンハウスに足を運んでください。

懐古主義と思われてもいい。このままAI(人工知能)が子どもの本を選ぶような日が来るかも知れません。しかし、それだけはとにかく避けたいと、科学の進歩をニュースなどで見るたびに思います。

おしまい

三輪丈太郎
1975年名古屋生まれ。生まれた時から子どもの本専門店の息子という肩書きが嫌で、ここ最近までは全く児童書に関わりのないフィールドに生息。ある日、大尊敬する人から「メルヘンハウスって良いと思う児童書をセレクトして置いているんでしょ?それって、良質なDJと一緒だね!」と言われたことがキッカケでメルヘンハウスに入社することを決意。メルヘンハウスの息子歴41年、メルヘンハウス歴4年目のかなり遅れてきたルーキー。

 

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お店のご紹介 詳細

営業時間
午前10時~午後7時まで
定休日
毎週水曜日
住所
〒464-0850 名古屋市千種区今池2-3-14
JR・地下鉄東山線 千種駅徒歩5分
※駐車場は店の裏手に5台
詳しいアクセス
TEL
052-733-6481

選びぬかれた絵本や童話を常時30,000冊揃えて、みなさまのご来店をお待ちしております。

絵本の読み聞かせ、紙芝居など、楽しいイベントを定期的に開催しております。

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