第37回「ロングセラーは子どもがつくる」

大人にとっての難しい絵本の一冊

僕の大好きな絵本に、『もこ もこもこ』(文研出版)があります。大型絵本、見開き一画面の色鮮やかな抽象画、「しーん」、「もこもこ」、「にょき」、「もぐもぐ」……などの擬態語だけで構成されているこの絵本は、当時のお話し絵本全盛の中、特異な存在でした。大人の目には止まらず、大人にとっての難しい絵本の一冊に仲間入りでした。

谷川俊太郎 作/元永定正 絵 (文研出版)

谷川俊太郎 作/元永定正 絵
(文研出版)

そんな背景もあり、開店以来ずーっと、積極的におすすめしてきた本です。大人には一生懸命説明しました。子どもには一生懸命読み聞かせしました。どうしてこんなに固執したかというと、大人と子どもの評価がこれほどかけ離れている本は珍しいからでした。そしてこの絵本が分かる大人がどんどん増えることが、子どもの本の理解に繋がっていくと思ったからです。

出版当時は全く売れませんでした。しかし・・・・・・

売れる売れないのバロメーターは、残念ながら、「大人がその本の内容と値段に納得するかどうか」です。子どもが自ら「この本面白い!」と胸に抱えても自分のものになるとは限りません。最終決定権は、大人にあるのです。そういう意味では、読むのは子ども、買うのは大人、という二重構造になっています。『もこもこもこ』は、出版当時は全く売れませんでした。売れる売れないのバロメーターにひっかかりもしませんでした。本屋のおじさんとしては、とてもさびしい思いを長く味わいました。

『もこ もこもこ』が累計100万部突破したというニュース(2014年)が耳に入った時には、「やったー!」と興奮するのと同時に「よく頑張ったね」と本をひと撫でしたい気持ちでした。100万部と軽く言いますが、子どもの本の世界ではこの数字は限られた本にしか与えられない、とても名誉なことなのです。一過性のベストセラーではなく、40年という長きにわたり、子どもたちにゆっくりと支持され続けてきた結果です。

代表 三輪哲

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営業時間
午前10時~午後7時まで
定休日
毎週水曜日
住所
〒464-0850 名古屋市千種区今池2-3-14
JR・地下鉄東山線 千種駅徒歩5分
※駐車場は店の裏手に5台
詳しいアクセス
TEL
052-733-6481

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