自作を語る
面白い時代小説を
那須正幹

那須正幹 さん
なす まさもと
1942年、広島に生まれる。
島根農科大学林学科卒業後、文筆活動に入る。
27年間、シリーズ合計50巻続いた児童小説最大のヒット作品『ズッコケ三人組』(ポプラ社)シリーズで広く知られる。
それいけ!ズッコケ三人組」ホームページをぜひご覧ください。
 大あばれ山賊小太郎(3部作)   お江戸の百太郎(全6巻) 
   
 ブッククラブ5年生コース4月配本    ブッククラブ6年生コース5月配本

 以前まげ物の児童書は売れないといわれた頃があった。理由のひとつはそれまでの作品が地味な歴史小説に偏り、娯楽要素に乏しかったせいもある。それに抗して面白い時代小説を目指したのが『大あばれ山賊小太郎』で、初版は1982年と古い。このときは主人公の小太郎がおろち山の山賊に仲間入りするまでを描いたのだが、続編を書きたいと思いつつ、そのままになっていた。たまたま新しい編集者と話しているうち、ぜひ続編も書いて欲しいとの要請があり、2002年に出版された新装版に続き、1年後に『気球にのった少年』2年後に『八雲の国の大合戦』を上梓し、3部作として完結した。
 作者が特に力を入れたのは、波乱万丈のストーリーもさることながら、個性的な人物を次々と登場させて、彼らの活躍で舞台を盛り上げるというやり方である。はぐれ忍者のマメ太、天才剣士月形剣之助、商売上手な銭八、発明家の次郎丸と、多士済々である。敵役のほうも、親玉の牛首入道と配下の赤岩重太夫をはじめ、幻術使いのおぼろ道士など強敵を配した。
 時代は一応戦国時代の初期に設定してあるが、作者の脳裏にあったのは敗戦後直後の混乱期、闇市をうろつく戦災孤児たちのイメージであるし、作者自身の被爆体験などもかなり投影されているような気がする。
 とはいえ、あくまでも痛快時代小説である。いかに過酷な状況の中でも、小太郎たちは明るく楽しく敵と戦っていくし、従来の児童書ではあまり描かれない殺戮場面もリアルに描いたつもりである。このあたりは、子ども向けだからといって手加減しないという作者の創作姿勢の表れかも知れない。もちろんそれもこれも時代小説だから可能なことで、現代物ではとてもこんな残酷な場面は書けないと思う。強盗犯を主人公にした作品そのものが、時代小説だから可能なのではないだろうか。
 同じ意図から生まれた、捕り物帳『お江戸の百太郎』シリーズも、機会があればぜひお読みいただきたいものだ。

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