自作を語る
絵本づくりの原点
『じゃあじゃあびりびり』
まついのりこ
偕成社/600円+税
(松井紀子)1934年和歌山県生まれ。
自分の子どものために制作した手づくり絵本を出発点に数多くの絵本を出版。その中には、知識絵本の分野で意欲的な作品も多く出しています。また紙芝居の独自性を追求し、この分野でも作品や理論書を出しています。海外への紙芝居普及にも精力的に活動されています。

 49年前、私は母親になりました。その頃の日本は、敗戦の廃墟の中から立ち上がり、人々は人間らしく生きていくことを求めていました。絵本の出版数はまだ僅かでしたが、開拓が始まり黎明期が来ていました。私は娘の保育園でそんな黎明期の絵本に出あったのです。絵本のページをめくりながら、私自身が幸せでした。絵本は私に明日に向かって生きていく喜びを渡してくれるのです。その喜びを娘と分かち合いたくて、私は娘に絵本を毎晩読み続けました。
 やがて私は自分が絵本を描きたくなり、28才のとき美大に入学。32才で卒業した年、次女朝子が誕生。私は「この子が本当に喜ぶ絵本をつくりたい」と願ったのでした。朝子の日々を見つめ、朝子が求めているものを探しだし、彼女のために手づくりで絵本をつくっていきました。
 1才になった頃、朝子は擬音にとても興味を持ち始めました。彼女のために私は、「みず じゃあじゃあ」「かみ びりびり」など擬音の絵本をはり絵で手づくりしていきました。その本の開いたときのサイズを、私は娘の肩幅と同じにしました。なぜって両手を前に出して本を持つ時、肩幅と同じに両手を差し出すのがいちばん楽だと気がついたからでした。その頃、娘は絵本を見る時、自分で持ちたがっていたのです。
 私と娘の心をつないだ手づくりのこの絵本は今、たくさんの子どものもとに届き、私はたくさんの赤ちゃんを心で抱くことができます。とてもとてもうれしいです。私の絵本は、今までに67冊出版されました。私の絵本の中を貫いて流れている想いがあります。それは「生きていく喜びを求め、まっすぐ子どもの心に向かい合いたい」という願いなのです。絵本『じゃあじゃあ びりびり』は、その想いの源泉です。この源泉を大切に、より豊かにしたくて私は今日も描き続けています。 

Copyright © 2009-2014 MERUHEN HOUSE All Rights Reserved.
禁無断複製・無断転載、 このホームページに掲載されている写真・記事・表などの無断転載を禁じます。